治癒切除が行われたstage III結腸癌患者に対するCapecitabine療法6ヵ月 vs. 12ヵ月投与の比較第III相試験(Oct.10 469PD)
本邦の大腸癌治療ガイドラインでは、stage III結腸癌治癒切除後の補助化学療法としてフッ化ピリミジン系製剤単独療法またはOxaliplatin(L-OHP)併用療法を6ヵ月間行うことが推奨されている。本試験は、Capecitabine単独療法の至適治療期間として、6ヵ月で十分なのか12ヵ月がよいのかを比較した本邦からの第III相試験である。
主要評価項目であるDFS(disease-free survival)は有意差を認めないnegative trialであるものの、RFS(relapse-free survival)、OSと合わせいずれも12ヵ月群が良好な生存曲線を示している。本邦の既報と比較し6ヵ月群の治療成績がやや悪いこと、5年OS割合を最初から主要評価項目とすることはできなかったのか、stage別のサブグループ解析など、いくつか試験に対する疑問は残るものの、両群の用量強度もまずまずであり、適切に実施された試験の結果として受け入れる必要はある。
しかしながら、同じくJFMCで行われたUFT/LV療法の6ヵ月 vs. 18ヵ月の比較試験では両群の生存成績に差を認めなかった1)点を考慮すれば、長期投与が予後を改善するという一貫した結果は得られていない。欧米からの報告ではあるものの、3つの大規模無作為化比較試験で一貫してL-OHP併用による生存改善を認めたことから2-4)、欧米ではL-OHP併用療法が標準治療と認識されている。現時点では、L-OHP併用療法の代替としてCapecitabine単独12ヵ月投与を患者に提案するには、まだエビデンスが不十分であろう。
(コメント・レポート:愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部 医長 谷口 浩也)
Stage II/III結腸癌の術後再発のうち80%は術後3年以内に生じ、12~18ヵ月が最も再発率が高いことが報告されている5)。また、治癒切除が行われたstage III結腸癌に対し、6ヵ月(24週)間のCapecitabineによる補助化学療法は、5-FU/LV療法と同等であることが示されている6)。本試験は、Capecitabine療法24週間投与と比較して48週間投与の優越性を検証した、本邦における第III相試験である。
治癒切除が行われたstage III結腸癌(Rs含む)を対象にCapecitabine(2,500mg/m2, bid, day 1-14, 21週間毎)8サイクル群(6M群)と16サイクル群(12M群)に1:1で割り付けられた。主要評価項目はDFS、副次評価項目はRFS、OS等であった。6M群の5年DFS割合を60%、12M群を67%と期待し、α=0.05、検出力80%で必要症例数は1,200例と算出された。
2008年9月~2009年12月までに1,304例が無作為化された。患者背景は6M群/12M群でそれぞれ、年齢中央値65歳/65歳、男性53.8%/52.8%、ECOG PS 0が95.0%/97.1%であり、UICC TNM分類 第7版によるstage IIIA/IIIB/IIICは、6M群14.4%/70.5%/15.1%、12M群 14.8%/70.5%/14.8%で群間差を認めなかった。
主要評価項目のDFSはハザード比0.866(95% CI: 0.717-1.046, p=0.068)であり、両群に有意差を認めなかった。一方、5年RFS割合は6M群69.3%、12M群74.1%(HR=0.808, 95% CI: 0.658-0.992, p=0.0207)、5年OS割合はそれぞれ83.2%、87.6%(HR=0.737, 95% CI: 0.557-0.975, p=0.0159)と有意に12M群で良好であった。
治療完遂割合は、6M群71.5%、12M群46.1%であったが、8サイクル完遂割合はそれぞれ71.5%、71.7%で差を認めなかった。なお、6M群の80.4%、12M群の56.2%で、計画されたCapecitabine量の60%以上が投与されていた。
12ヵ月のCapecitabineによる術後補助化学療法は、6ヵ月の標準投与量と比較して有意なDFS改善は認められなかった。しかしOS、RFSは12M群で良好であった。Stage III結腸癌術後補助化学療法の至適治療期間には、さらなる検討が必要である。
1) Sadahiro S, et al.: Ann Oncol. 26(11). 2274-2280, 2015[PubMed]
2) Andre T, et al.: J Clin Oncol. 27(19): 3109-3116, 2009[PubMed]
3) Kuebler JP, et al.: J Clin Oncol. 25(16): 2198-2204, 2007[PubMed]
4) Schmoll HJ, et al.: J Clin Oncol. 25(1): 102-109, 2007[PubMed]
5) Sargent D, et al.: J Clin Oncol. 27(6): 872-877, 2009[PubMed]
6) Twelves C, et al.: N Engl J Med. 352(26): 2696-2704, 2005[PubMed]