ESMO2018 演題レポート Munich, Germany 19 Oct - 23 Oct 2018

2018年10月19日~23日にドイツ・ミュンヘンで開催された 2018年 欧州臨床腫瘍学会学術集会(ESMO 2018 Congress)より、大腸癌や胃癌などの消化器癌の注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載します。

演題レポート

Poster Discussion Session

#620PD
食道癌

食道癌に対する化学放射線同時併用療法における、経腸栄養による栄養状態、治療耐容性、治療成績の改善結果:前向き無作為化比較試験

Enteral nutrition improves nutritional status, treatment tolerance and outcomes in patients with esophageal cancer undergoing concurrent chemoradiotherapy: results of a prospective, randomized, controlled, multicenter trial (NCT02399306).

Tao Li, et al.

監修コメント

加藤 健 先生

国立がん研究センター中央病院 消化管内科 医長

 食道扁平上皮癌に対する化学放射線同時併用療法(CCRT)における栄養介入に伴うアウトカムの変化をみた前向き無作為化試験である。CCRTは、切除可能食道扁平上皮癌に対して根治が期待できる一方、食道炎などの有害事象があり、感染症や体重減少などにつながることが知られている。本邦で行われたstage II/IIIに対するCCRTの前向き試験であるJCOG0909では、grade 3以上の食道炎は約20%、grade 3以上の好中球減少を約55%に認めている1)。Grade 3の食道炎とは、高度に経口的栄養摂取が障害され、入院での高カロリー輸液などが必要となる状態であり、できるだけ避けたい有害事象である。
 今回の臨床試験は扁平上皮癌の多い中国で行われた。標準的な食事療法に対し、栄養評価および栄養介入が行われた群(栄養介入群:EN群)を比較し、有害事象と有効性の面でのアウトカムの比較を行った試験である。結果としては、体重減少はEN群において有意に少なく、貧血やアルブミンの減少もEN群で少なかった。感染症などの有害事象の発現も減少したことから治療完遂(treatment completion)割合もプラセボ群より10%ほど高く、結果として、1年生存割合は両群に変化がなく、2年生存割合でEN群が良好であった。
 近年、CCRTを含め、術前治療においてもより強力な治療介入を行うことで治療成績を改善する傾向にあり、そういった意味では支持療法の重要性は高まりつつある。術前治療期におけるサルコペニアが術後早期合併症における感染のリスクファクターであることは複数の報告があり、栄養介入の意義はガイドラインなどですでに指摘されている。今回は、根治的化学放射線療法においても重要性を示した結果となる。ただ、試験内容については、栄養介入の具体的方法や、原発部位、治療効果などの詳細な記載がなく、体重も本来であれば除脂肪体重などを用いるべきところを通常の体重で評価しているなど、もう少し詳細な情報が欲しい内容であった。
 いずれにしても、食道癌の根治的治療において、栄養介入は今までと変わらず重要であるということを再確認させられた発表であった。

(コメント・監修:国立がん研究センター中央病院 消化管内科 医長 加藤 健)

食道扁平上皮癌化学放射線療法に対する経腸栄養による介入

 食道癌に対する化学放射線同時併用療法(concurrent chemoradiotherapy: CCRT)は栄養不良を引き起こす可能性が高く、栄養不良はさまざまな有害事象を引き起こし、結果として治療強度の低下となり予後に影響する可能性が示唆される。食道癌に対するCCRTにおいて、体重、栄養状態、有害事象、生存の影響を検討することを目的とした無作為化比較試験が実施された。
 2015年3月から2017年6月まで、食道扁平上皮癌患者(222例)を対象に、栄養介入群(EN群)と対照群に無作為に2:1で割り付けられた(148例vs. 74例)。EN群は個々の栄養状態が評価され経腸栄養による介入が行われたが、栄養介入による詳細の記載はなかった。CCRTは、Docetaxel 75mg/m2(day 1)+Cisplatin 25mg/m2(day 3)を2~4サイクルの化学療法に、プラス放射線治療60-66Gy、30-33frを6~7週間併用とされた。主要評価項目は、試験開始から治療後までの体重の変化とされ、副次評価項目は、栄養に関連する血液パラメータの変化、有害事象、全生存(OS)期間とされた。

経腸栄養により体重減少は改善された

 治療前栄養関連血液パラメータとして、PG-SGA(Patient-Generated Subjective Global Assessment)スコア、体重、血清アルブミン(Alb)値、リンパ球数、ヘモグロビン(Hb)値が評価され、両群間には差を認めなかった。治療前、治療中、治療後の体重減少は、EN群で有意に少なかった(p<0.001)(図1)。また、治療前、治療中、治療後のAlb値、Hb値の減少も、EN群で有意に少なかった。
 治療完遂(treatment completion)割合は、EN群93.1%、対照群79.5%であった。1年OS割合は、EN群86.2%、対照群83.6%(p=0.248)であり、2年OS割合は、EN群71.7%、対照群57.5%(p=0.047)であった。
 有害事象について、grade 3以上の白血球減少は、EN群32.4%、対照群47.9%(p=0.027)であり、感染症の発現は、EN群16.6%、対照群30.1%(p=0.023)であった。

図1 The body weight changes during and after treatment(発表者の許可を得て掲載)

図1
まとめ

 食道癌に対するCCRTにおいて、経腸栄養は栄養状態を改善し、治療耐容性の改善とOS期間の延長を示した。

(レポート:京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 医員 野村 基雄)

References
  • 1) Ito Y, et al.: ASCO 2018 #4051
関連サイト
  • ・NCT02399306[ClinicalTrials.gov
  • ・JCOG0909[UMIN-CTR][JCOG
  • ・Stage IIまたはIII(T4を除く)食道癌に対する根治的化学放射線療法+/-救済治療の検証的非無作為化試験(JCOG0909 EC-CRT+Salvage-sP3試験):ASCO 2018 #4051[学会レポート