ESMO2019 confress 演題レポート Barcelona, Spain 27 Sep - 01 Oct 2019

2019年9月27日~10月1日にスペイン・バルセロナで開催された 2019年 欧州臨床腫瘍学会学術集会(ESMO 2019 Congress)より、大腸癌や胃癌などの消化器癌の注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載します。

演題レポート

Proffered Paper Session

#LBA44
胃癌

MSI-Highを有する切除不能進行・再発胃癌/食道胃接合部癌の一次治療におけるPembrolizumab+化学療法併用あるいはPembrolizumab単剤療法vs. 化学療法の結果(KEYNOTE-062試験)

Pembrolizumab With or Without Chemotherapy vs Chemotherapy in Patients With Advanced G/GEJ Cancer Including Outcomes According to Microsatellite Instability-High Status in KEYNOTE-062

Kohei Shitara, et al.

監修コメント

砂川 優 先生

聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学 准教授

 高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-High)を有する進行・再発胃癌/食道胃接合部癌に対して、一次治療で免疫チェックポイント阻害薬を使用する有用性が報告された。
 ATTRACTION-2試験において、三次治療以降のNivolumab(Nivo)の生存期間延長効果が示され、すでに本邦では胃癌治療ガイドラインに記載され標準治療になっている。しかし、二次治療における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証したKEYNOTE-061試験では、化学療法に対してPembrolizumab療法の生存期間延長効果を示すことができなかった。
 一次治療における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検証したKEYNOTE-062試験では、化学療法にPembrolizumabを併用する意義は証明されなかったが、Pembrolizumab単剤療法が化学療法に対して非劣性であることが示され、その有効性はPD-L1陽性割合であるCPS(Combined Positive Score)≧10でさらに期待される結果であることがすでに報告されている。しかしながら、統計学的な非劣性は証明されたものの、KM曲線はPembrolizumab単剤療法群と化学療法群でクロスしており、一次治療からPembrolizumabを使用する症例について議論が必要であった。
 今回、本試験のMSI-High症例に対して行われたサブ解析では、ハザード比(HR)=0.2台の良好な数値とともに一次治療におけるPembrolizumabの有効性が示され、これはCPSにかかわらずに認められた。また、MSI-High症例を除いた集団においても、化学療法に対するPembrolizumab単剤療法の非劣性は保たれていたため、一次治療からPembrolizumabの効果を認める症例はMSI-High以外にもあることが予想される。
 今後本邦では、胃癌に対してPembrolizumabがどのように推奨されていくのか。現時点で本邦の胃癌治療ガイドラインでは、KEYNOTE-061試験のマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability: MSI)解析の結果に基づいて二次治療以降の使用が推奨されている。今回報告されたサブ解析結果は、化学療法に比べてとても良いOS期間が示されており、個人的にはMSI-High症例に対する一次治療の標準治療になり得ると感じた。MSI-Highを有する胃癌の一次治療戦略に対して本邦ではさらなる議論が必要であろう。

(コメント・監修:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学 准教授 砂川 優)

Pembrolizumab療法の化学療法に対する非劣性、化学療法に対するPembrolizumab+化学療法の優越性を検証

 これまで、Pembrolizumabは切除不能・進行胃癌/食道胃接合部癌に対して抗腫瘍効果と忍容性を示している。Pembrolizumabの有効性を検証したKEYNOTE-059試験では2レジメン以上の前治療に不応または不耐かつCPS(Combined Positive Score)≧1の症例において、全奏効割合(ORR)16%、DOR(duration of response)16ヵ月であり、KEYNOTE-061試験ではフッ化ピリミジン系薬剤、プラチナ系薬剤に不応または不耐の症例において、Paclitaxel(PTX)に対するPembrolizumabのOS期間は、CPS≧1ではHR=0.82(95% CI: 0.66-1.03)、CPS≧10ではHR=0.64(95% CI: 0.41-1.02)であった。
 また、KEYNOTE-062試験では、Pembrolizumab療法は化学療法に対して非劣性を示したが、Pembrolizumab療法+化学療法の化学療法に対する優越性は示せなかった。今回は、高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-High)例を対象としたKEYNOTE-062試験のサブ解析の結果を紹介する。

MSI-High症例を対象としたサブ解析では、Pembrolizumab療法の化学療法に対する非劣性が示された

 KETNOTE-062試験に登録された763例のうちMSI-High症例は、Pembrolizumab療法群(以下、P群)14例(5%)、Pembrolizumab療法+化学療法群(以下、P+C群)17例(7%)、化学療法群(以下、C群)19例(8%)であり、そのうちCPS≧10はそれぞれ11例、11例、10例であった。
 P群とC群の全体を比較したOS期間は、CPS≧1では10.6ヵ月vs. 11.1ヵ月(HR=0.91、95% CI: 0.69-1.18)、CPS≧10では17.4ヵ月vs. 10.8ヵ月(HR=0.69、95% CI: 0.49-0.97)であった。
 P群とC群のMSI-High症例を比較したOS期間は、CPS≧1ではNR vs. 8.5ヵ月(HR=0.29、95% CI: 0.11-0.81)、CPS≧10ではNR vs. 13.6ヵ月(HR=0.21、95% CI: 0.06-0.83)であった(図1)。同様にnon-MSI-High症例におけるOS期間は、CPS≧1では9.5ヵ月vs. 11.2ヵ月(HR=0.94、95% CI: 0.77-1.14)、CPS≧10では16.0ヵ月vs. 10.8ヵ月(HR=0.76、95% CI: 0.54-1.09)であった(図2)。
 P群とC群の全体を比較した無増悪生存(PFS)期間、ORR、DORはそれぞれ、CPS≧1では2.0ヵ月vs. 6.4ヵ月(HR=1.66、95% CI: 1.37-2.01)、14.8% vs. 37.2%、13.7ヵ月vs. 6.8ヵ月、CPS≧10では2.9ヵ月vs. 6.1ヵ月(HR=1.10、95% CI: 0.79-1.51)、25.0% vs. 37.8%、19.3ヵ月vs. 6.8ヵ月であった。P群とC群のMSI-High症例を比較したCPS≧1のPFS期間、ORR、DORはそれぞれ、11.2ヵ月vs. 6.6ヵ月(HR=0.72、95% CI: 0.31-1.68)、57.1% vs. 36.8%、21.2ヵ月vs. 7.0ヵ月であった(図3)。

図1 Pembro vs Chemo: OS in MSH-H Group(発表者の許可を得て掲載)

図1

図2 Pembro vs Chemo: OS in Non-MSH-H Group(発表者の許可を得て掲載)

図2

図3 Pembro vs Chemo: PFS and DOR in MSI-H Group (CPS≥1)(発表者の許可を得て掲載)

図3
MSI-High症例を対象としたサブ解析では、Pembrolizumab療法+化学療法の化学療法群に対する優越性は示されなかった

 一方、P+C群とC群全体を比較したOS期間は、CPS≧1では12.5ヵ月vs. 11.1ヵ月(HR=0.85、95% CI: 0.70-1.03)、CPS≧10では12.3ヵ月vs. 10.8ヵ月(HR=0.85、95% CI: 0.62-1.17)であった(図4)。
 P+C群とC群のMSI-High症例を比較したOS期間は、CPS≧1ではNR vs. 8.5ヵ月(HR=0.37、95% CI: 0.14-0.97)、CPS≧10ではNR vs. 13.6ヵ月(HR=0.26、95% CI: 0.07-0.99)であった。
 P+C群とC群全体を比較したPFS期間、ORR、DORはそれぞれ、CPS≧1では6.9ヵ月vs. 6.4ヵ月(HR=0.84、95% CI: 0.70-1.02)、48.6% vs. 37.2%、6.8ヵ月vs. 6.8ヵ月、CPS≧10では5.7ヵ月vs. 6.1ヵ月(HR=0.73、95% CI: 0.53-1.00)、52.5% vs. 37.8%、8.3ヵ月vs. 6.8ヵ月であった。P+C群とC群のMSI-High症例を比較したCPS≧1のPFS期間、ORR、DORはそれぞれ、NR vs. 6.6ヵ月(HR=0.45、95% CI: 0.18-1.11)、64.7% vs. 36.8%、NR vs. 7.0ヵ月であった(図5)。

図4 Pembro+Chemo vs Chemo: OS(発表者の許可を得て掲載)

図4

図5 Pembro+Chemo vs Chemo: PFS and DOR in MSI-H Group (CPS≥1)(発表者の許可を得て掲載)

図5
主な治療関連有害事象

 治療関連有害事象(CPS≧1)の発現割合は、P群vs. C群では、Grade 3-5では17% vs. 69%、治療関連死は1% vs. 1%、免疫関連有害事象は21% vs. 8%であった。P+C群vs. C群では、Grade 3-5では73% vs. 69%、治療関連死2% vs. 1%、免疫関連有害事象24% vs. 8%であった。

まとめ

 MSI-Highを有する切除不能進行・再発胃癌/食道胃接合部癌に対し、CPS≧1、CPS≧10いずれにおいても、Pembrolizumab療法は化学療法に対してより優れた治療効果を認めた。一方、Pembrolizumabの化学療法への上乗せ効果はわずかであったが、忍容性は保たれていた。

(レポート:静岡がんセンター 消化器内科 川上 武志)

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