切除可能胃癌/食道胃接合部腺癌を対象としたDurvalumab併用FLOT療法の第III相無作為化試験(MATTERHORN試験)における最終全生存期間解析結果および病理学的転帰とイベントフリー生存期間との関連
Final overall survival and the association of pathological outcomes with event-free survival in MATTERHORN: a randomised, Phase 3 study of durvalumab plus 5-fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel in resectable gastric / gastroesophageal junction adenocarcinoma
Josep Tabernero, et al.
監修コメント
胃癌の周術期化学療法にPD-L1抗体であるDurvalumabを併用することで、EFS(Event Free Survival)を改善することを、ASCO 2025で示したMATTERHORN試験は、EFSの改善が全生存期間(OS)の改善につながるのか?ということで、ESMOでのOSの結果発表が注目されていた。果たしてOSの中央値は両群とも未達であったが、HR=0.78(0.63–0.96)、p=0.021と、有意な差をもって延長効果を示した。これにより、いわゆるD-FLOT療法が胃癌の周術期治療において完全に標準治療となったと言える。3剤併用化学療法に免疫チェックポイント阻害剤を加えることでの毒性の増加については許容範囲と考えられたが、術後のFLOTの開始割合と完遂割合が低いことは気になる点であった。ただ、これは術前に行った3剤併用化学療法を術後にも行うという、MAGIC試験からの欧州の文化の影響であり、周術期の免疫チェックポイント阻害剤のためではない。
一方で、日本では、手術を行った後に病理病期に合わせて術後化学療法を行うことが標準治療であり、一部根治切除が困難と思われる集団に、術前にS-1+CDDPあるいはSOX療法を行うことがガイドラインで推奨されている。実際に、日本における術前FLOT療法は一般的ではなく、一部の施設での安全性などが報告されているのみである。ただ、日本サブグループでも同様に上乗せ効果があれば、導入を試みる施設も増えると思われる。そういった意味では、来年の胃癌学会、臨床腫瘍学会での発表に期待したいと思う。ただし、毒性の管理を慎重に行う必要があるため、D-FLOTを行う症例は若年者のより進行した症例に限られる可能性がある。日本人になじみのあるSOX療法をベースに免疫チェックポイント阻害剤を併用したようなレジメンがあれば、より選択の幅が広がると思われ、そのようなレジメンの治療開発も望まれる。
(コメント・監修:国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長
加藤 健)
周術期の胃癌/食道胃接合部癌における薬物療法
従来、胃癌における周術期の薬物療法のstrategyは本邦と欧米において異なっている。
本邦においては、根治的D2郭清術後のpStage IIまたはIIIA/Bの胃癌患者に対して、S-1による補助化学療法と手術単独を比較したACTS-GC試験1)、同様の背景患者に対してCapecitabine+Oxaliplatin(CAPOX)による術後補助化学療法と手術単独を比較したCLASSIC試験2)、およびpStage IIIの胃癌患者を対象としたDocetaxel+S-1(DS)とS-1単独の術後補助化学療法を比較したJACCRO GC-07試験3)の結果をもとに、D2郭清を行ったpStage IIの胃癌に関してはS-1単独、pStage IIIの胃癌に関してはDSを行い、CAPOXはオプションとして行われる。
一方で、欧米では術前・術後の周術期で薬物療法を用いる治療が広く行われており、T2以上の深達度、またはリンパ節転移を伴う胃癌/食道胃接合部癌を対象とした、周術期のFluorouracil+Leucovorin+Oxaliplatin+Docetaxel(FLOT)とEpirubicin+Cisplatin+Fluorouracil(ECF)/EC+Capecitabine(ECX)を比較するFLOT4-AIO試験4)で、主要評価項目の全生存期間(OS)においてFLOT群の優越性が示されたことから、標準治療として確立している。しかし、同試験では日本人を含むアジア人が含まれておらず、前述のD2郭清+術後補助化学療法の治療成績が良好であることもあり、本邦における周術期FLOTの推奨には至っていないのが現状である。
既報のMATTERHORN試験
MATTERHORN試験は、cStage II-IVの切除可能な胃癌および食道胃接合部腺癌を対象に、免疫チェックポイント阻害薬Durvalumab(抗PD-L1抗体)をFLOT療法に併用する周術期治療の有効性を検証した国際第III相二重盲検無作為化試験であり、既に、解析結果に関してNew England Journal of Medicine誌にて報告されている5)。
アジア、欧州、北米、南米の20カ国147施設で計948例が登録され、Durvalumab+FLOT群またはプラセボ+FLOT群に1:1で割り付けられた。層別化因子は、①アジア vs. アジア以外の地域、②リンパ節転移の有無、③PD-L1 TAP<1%またはTAP≧1%であった(図1)。主要評価項目であるイベントフリー生存期間(EFS)はDurvalumab群で有意に延長し、2年EFS割合は67.4% vs. 58.5%、ハザード比(HR)=0.71、95% CI: 0.58-0.86、p<0.001であった。病理学的完全奏効割合(pCR)もDurvalumab群19.2%、プラセボ群7.2%と有意に高かった。OSに関して統計学的有意差はなかったものの、12カ月以降の解析ではDurvalumab群が良好であった[HR=0.67(0.50-0.90)]。Grade 3-4の有害事象発現割合は両群で同程度(約71~72%)であり、安全性は許容範囲内であった。これらの結果より、Durvalumab併用FLOT療法は再発リスクを有意に低減し、周術期における薬物療法の新たな標準治療となる可能性が示された。
今回、ESMO 2025では上記の結果に加えて、最終のOSの解析結果および病理学的奏効とEFSとの関連解析が新たに報告されている。
図1 MATTERHORN study design(発表者の許可を得て掲載)
OSの最終解析およびサブグループ解析では一貫してDurvalumab群の優越性が示された
OSのデータカットオフは2025年9月1日で追跡期間中央値はDurvalumab群43.0カ月、プラセボ群42.9カ月であった。OS中央値は両群とも未到達であったが、Durvalumab群は、プラセボ群と比較して有意なOS延長を示した[HR=0.78(0.63-0.96)、p=0.021]。また、18カ月、24カ月、36カ月時点のDurvalumab群の全生存割合はそれぞれ81.1%、75.5%、68.6%、プラセボ群はそれぞれ77.1%、70.4%、61.9%であり、いずれも一貫して上回る結果となった(図2)。
サブグループ解析では年齢、性別、PD-L1発現(TAP<1%/≧1%)、地域、ECOG PSなど主要サブグループのほとんどでDurvalumab群の一貫したOSの延長が示された(図3)。また、PD-L1発現状況に注目すると、Durvalumab群でPD-L1 TAP≧1%ではHR=0.79(0.63-0.99)、PD-L1 TAP<1%ではHR=0.79(0.41-1.50)という結果であった(図4)。
図2 Final OS(発表者の許可を得て掲載)
図3 OS in key subgroups(発表者の許可を得て掲載)
図4 OS by PD-L1 status(発表者の許可を得て掲載)
病理学的奏効によらず、Durvalumab群ではEFS中央値が改善
病理学的奏効度はmodified Ryan scoreによって中央判定され、pCR(score 0)、MPR(0または1)、およびany pathological response(0-2)の3群に層別化された。
全体集団ではpCR率16.5%、MPR率25.8%、any pathological response率87.1%であり、Durvalumab群ではany pathological response率が89.9%と、プラセボ群(84.1%)より高率であった。
EFS中央値は未到達ながら、pCR群:HR=0.29(0.08-0.96)、MPR群:HR=0.32(0.15-0.68)、any pathological response群:HR=0.60(0.46-0.79)とすべての病理学的奏効度でDurvalumab群が良好な結果であった。また、24カ月EFS率はpCR群96.5%、MPR群92.7%、any pathological response群78.3%であった(図5)。
図5 Pathological response and EFS(発表者の許可を得て掲載)
Durvalumab群ではリンパ節転移陰性化割合が高く、downstagingに影響している可能性あり
手術後にリンパ節転移(ypN)が評価可能であった811例(Durvalumab群411例、プラセボ群400例)を対象とした解析では、Durvalumab群ではypN陰性率が58.2%と、プラセボ群の44.8%を上回った。また、術前にリンパ節転移陽性であったが、術後に陰性化していたdownstagingに寄与した症例は、Durvalumab群で36.0%、プラセボ群で28.0%であった(表1)。
また、ypN陰性および陽性ごとのEFSを比較すると、24カ月EFS率はypN陰性でDurvalumab群88.3% vs. プラセボ群84.7%、HR=0.74(0.46-1.18)、ypN陽性でDurvalumab群56.6% vs. プラセボ群51.3%、HR=0.77(0.58-1.02)とリンパ節転移の有無にかかわらず、Durvalumab群が良好な傾向であった(図6)。
表1 Nodal staging assessment by investigator(発表者の許可を得て掲載)
図6 Nodal staging and EFS(発表者の許可を得て掲載)
結果の総括
周術期のDurvalumab併用FLOT療法は、OSおよびEFSの双方で統計学的に優越性が示され、PD-L1発現の程度にかかわらず効果を認めた。さらに、病理学的奏効およびリンパ節downstagingにおいて良好なEFSが得られる傾向を認めている。これにより胃癌および食道胃接合部癌の根治切除可能症例における新たな標準治療となることが強く支持される。
(レポート:国立がん研究センター中央病院 消化管内科 山口 翔太郎)
References
- 1) Sakuramoto S, et al.: N Engl J Med. 357(18): 1810-1820, 2007 [PubMed]
- 2) Bang YJ, et al.: Lancet. 379(9813): 315-321, 2012 [PubMed]
- 3) Yoshida K, et al.: J Clin Oncol. 37(15): 1296-1304, 2019 [PubMed]
- 4) Al-Batran SE, et al.: Lancet. 393(10184): 1948-1957, 2019 [PubMed]
- 5) Janjigian YY, et al.: N Engl J Med. 393(3): 217-230, 2025 [PubMed]
関連サイト
- ・MATTERHORN試験[ClinicalTrials.gov][ASCO 2025レポート][論文紹介]
- ・ACTS-GC試験[ClinicalTrials.gov][論文紹介][ESMO 2010学会レポート]
- ・CLASSIC試験[ClinicalTrials.gov][論文紹介]
- ・JACCRO GC-07試験[JACCRO][論文紹介]
- ・FLOT4-AIO試験[ClinicalTrials.gov][ASCO 2017学会レポート]
- ・MAGIC試験[ISRCTN][論文紹介]

加藤 健 先生
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長