ESMO confress 2025 演題レポート 17-21 Oct. 2025

2025年10月17日~21日にドイツ・ベルリンで開催された 2025年 欧州臨床腫瘍学会学術集会(ESMO Congress 2025)より、食道癌や胃癌などの上部消化管癌の注目演題のレポートをお届けします。演題レポートの冒頭には、臨床研究の第一線で活躍する監修ドクターのコメントを掲載します。

演題レポート

Mini Oral Session

#2095MO
食道胃接合部癌

HER2陽性局所進行食道胃接合部腺癌における、FLOT+Pembrolizumab+Trastuzumab併用周術期療法の第II相試験:PHERFLOT/IKF-053試験

Pembrolizumab and trastuzumab in combination with FLOT in the perioperative treatment of HER2-positive localized esophagogastric adenocarcinoma: Interim analysis of the phase II PHERFLOT/IKF-053 trial of the AIO study group (AIO STO 0321)

Joseph Tintelnot, et al.

監修コメント

加藤 健 先生

国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長

 欧米では胃癌の周術期治療は術前および術後のFLOT療法となったが、HER2陰性胃癌に対しては、MATTERHORN試験の結果にてDurvalumabの上乗せ効果が示され、D-FLOT療法が新たに標準治療となった。一方、HER2陽性胃癌についての周術期治療については、広範なリンパ節転移を有する食道胃接合部癌に対するJCOG1301Cなど、術前化学療法にTrastuzumabを併用するレジメンにより、病理学的奏効度の改善が期待できるなど可能性が示されていた。PHERFLOT試験では、欧米で食道胃接合部腺癌に対する標準治療である術前術後FLOTに、Trastuzumabに加え、さらにPembrolizumabも加える5剤併用療法の有効性をみたphase II試験である。エンドポイントはpCRと2年DFS割合であるが、このたびpCRのデータが報告された。pCRは48.4%と、MATTERHORN試験でFLOTにDurvalumabを併用した場合の約19%と比較してもかなり高い数字が示された。また毒性についても下痢が若干増加するが、許容範囲と考えられた。ただ、わずか31例の報告であり、より多くの症例での検討、および、今回発表されなかったDFSのデータも必要である。また、バイオマーカーではCPSの数値やHER2陽性の程度により、有効性が増強されることが示唆されており、今後、このターゲットにてさらなる周術期治療開発を行う場合には、CPSやHER2の陽性度など、どこで区切るのが一番よいのか?が注目される。

(コメント・監修:国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長
 加藤 健)

HER2陽性食道胃接合部腺癌に対するICIを用いた新規治療開発

 免疫チェックポイント阻害剤の登場以降、HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発胃癌に対しては、2017年9月に3次治療以降でNivolumab単独療法1)が、2021年11月には従来の化学療法とNivolumabの併用療法2)が、それぞれ承認を獲得してきた。HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌においてもHER2陰性症例と同様に、化学療法に抗HER2抗体薬であるTrastuzumabを併用する従来の治療に、ICI併用の有効性と安全性についてさまざまな試験で検証されてきた。
 KEYNOTE-811試験3)では、combined positive score(CPS)≧1のHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌および食道胃接合部腺癌の一次治療に、従来の5-FU+白金製剤+Trastuzumabに、抗PD-1抗体薬であるPembrolizumabを併用することで統計学的に有意に全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を延長させることが証明され、本邦では2025年に承認を獲得した。また周術期においては、HER2陰性症例を対象とした治療開発が進んでいる。胃癌・食道胃接合部腺癌に対し欧米で用いられている術前FLOT(5-FU+Oxaliplatin+Docetaxel)療法に、抗PD-L1抗体であるDurvalumabを上乗せすることで、EFSを有意に改善することがMATTERHORN試験4)で証明され、本邦の胃癌・食道胃接合部腺癌の周術期療法に大きな影響を与えうる結果であった。
 上記はいずれも対象に含有しているものの、食道胃接合部腺癌に限った治療開発ではない。今回、HER2陽性の切除可能な局所進行食道胃接合部腺癌を対象とした新規周術期治療として、従来のFLOT療法にPembrolizumabおよびTrastuzumabを併用する意義を検討する第II相試験であるPHERFLOT/IKF-053試験5)を紹介する。

PHERFLOT/IKF-053の試験デザイン

 本試験はドイツ癌学会医学腫瘍学協会(Association of Medical Oncology of the German Cancer Society: AIO)の第II相試験として実施された。対象は、局所進行食道胃接合部腺癌で、病期はclinical T2-4、Nx、M0とされた。HER2発現については、IHC 3+、もしくは、IHC 2+かつISH+をHER2陽性と定義した。免疫療法の前治療歴があること、免疫不全状態であること、LVEF<55%であることが除外基準として設定された。術前治療はFLOT療法(5-FU:2,600mg/m2、IV、day1・Oxaliplatin:85mg/m2、IV、day1・Docetaxel:50mg/m2、IV、day1)を2週間隔で4サイクル、Pembrolizumab(200mg/body、day1)およびTrastuzumab(初回:8mg/kg・2回目以降:6mg/kg、day1)はそれぞれ3週間隔で3サイクル実施した。術前治療薬最終投与から4週以上の間隔を空けたのち手術が実施され、術後は術前と同じくFLOT療法を4サイクル、PembrolizumabおよびTrastuzumabを3サイクル投与し、その後はPembrolizumabとTrastuzumabを11サイクル投与するデザインであった(図1)。
 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR)割合ならびに2年時点の無病生存(DFS)割合、副次評価項目として実現可能性割合(重篤な有害事象なく、また病勢進行以外の理由でFLOT+Pembrolizumab+Trastuzumabの術後最終投与前に治療を中止しなかった患者の割合)、R0切除割合、全奏効割合(ORR)、全生存期間(OS)、そして安全性が設定された。さらに探索的評価項目として、分子学的サブグループ(CPS 0 vs. 1-9 vs. ≧10、HER2 IHC 3+ vs. IHC 2+/ISH+、dMMRおよびMSI-H)における有効性が設定されている。
 なお、主要評価項目のひとつである2年DFS割合や、副次評価項目については、追跡期間中央値が十分でなく、今回のESMO 2025では報告されていない。

図1 Trial overview(発表者の許可を得て掲載)

図1
HER2陽性切除可能局所進行食道胃接合部腺癌において、周術期FLOT+Pembrolizumab+Trastuzumab併用療法は実現可能性のある治療法であった

 31例の患者が試験に登録された。年齢中央値は65歳(33~76歳)、男性は25例(80.6%)、ECOG PSは0が20例(64.5%)、1が11例(35.5%)であった。HER2のステータスについてはIHC 3+が25例(80.6%)、IHC 2+かつISH+が6例(19.4%)であった。病理学的組織型は腸型腺癌が16例(51.6%)で最多であった。病期については、T因子はT3が20例(64.5%)で、N因子はN1が18例(58.1%)でそれぞれ最多であった。それぞれの症例のCPSは、0が6例(19.4%)、1-9が10例(32.3%)、≧10が11例(35.5%)であった(図2)。
 主要評価項目であるpCR割合は、48.4%(15例)であった。R0切除は30例に実施された(図3)。PD-L1およびHER2発現の高低によるサブグループ別にみると、PD-L1ではCPS 0で33.3%、CPS 1-9で40.0%、CPS≧10で63.6%、HER2ではIHC 2+かつISH+で33.3%、IHC 3+では52.0%と、それぞれのマーカーの発現が高いほど、高いpCR割合であることが示された(図4)。
 一方、副次評価項目のひとつである治療の実現可能性については、登録された31例のうち21例(67.7%)で周術期治療を完遂できた。閾値として設定されていた66.6%を上回り、実現可能性があることが証明された(図5)。安全性については、grade 3以上の重篤な有害事象は下痢が12例(38.7%)、体重減少が5例(16.1%)、白血球減少が4例(12.9%)、好中球減少が8例(25.8%)、貧血が4例(12.9%)、敗血症はgrade 5の1例(3.2%)を含む6例(19.3%)にみられた。手術にまつわる有害事象として、再手術になった症例は8例(26.7%)、入院期間中央値は14日、術後30日間の死亡例は認めなかった(表1)。

図2 Baseline Characteristics(発表者の許可を得て掲載)

図2

図3 Pathological response(発表者の許可を得て掲載)

図3

図4 Pathological response: Subgroups(発表者の許可を得て掲載)

図4

図5 Feasibility: CONSORT Diagram(発表者の許可を得て掲載)

図5

表1 Safety(発表者の許可を得て掲載)

表1
結果

 HER2陽性切除可能局所進行食道胃接合部腺癌において、周術期FLOT+Pembrolizumab+Trastuzumab併用療法は実現可能性のある治療法であることが示された。一方で安全性については、従来の周術期FLOT療法6)と比較し、再手術の割合が高い結果となった。

(レポート:国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科 森田 竜一)

References
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  • 2) Janjigian YY, et al.: Lancet. 398(10294): 27-40, 2021 [PubMed]
  • 3) Janjigian YY, et al.: N Engl J Med. 391(14): 1360-1362, 2024 [PubMed]
  • 4) Janjigian YY, et al.: N Engl J Med. 393(3): 217-230, 2025 [PubMed]
  • 5) Stein A, et al.: Nat Med. Oct 18, 2025 [Online ahead of print] [PubMed]
  • 6) Al-Batran SE, et al.: JAMA Oncol. 3(9): 1237-1244, 2017 [PubMed]
関連サイト